PREP法: 明日から使える効果的なコミュニケーション術

目次

はじめに

「あの件、どうなってる?」「えっと、それはですね…」

日々の業務でこのように言葉に詰まってしまうことはありませんか?
技術的な内容をチームメンバーや、時には非技術者の方に伝えなければならない場面、あるいは日々の報告・連絡・相談 (ホウレンソウ) で、自分の意図がうまく伝わらず、もどかしい思いをしたことがあるかもしれません。

「もっと簡潔に説明できないの?」「で、結論は何?」

そんな風に言われてしまい、落ち込んだり、コミュニケーションそのものに苦手意識を持ってしまったりするエンジニアは少なくありません。
実際、コミュニケーションの齟齬は、単に気まずいだけでなく、プロジェクトの遅延や手戻りを引き起こし、チーム全体の生産性を下げてしまう可能性も秘めています。

この記事の対象読者

  • 若手バックエンドエンジニアの方: 特に経験1~3年目で、これからさらにスキルアップしていきたいと考えている方
  • コミュニケーションに課題を感じている方: 「自分の話が分かりにくいのでは…」と悩んでいたり、「もっと論理的に説明できるようになりたい」と考えていたりする方
  • 技術的な内容を非エンジニアにも分かりやすく伝えたい方: 専門知識のない相手にも、話の要点を正確に理解してもらいたいと思っている方
  • 日々の報告・連絡・相談をスムーズに行いたい方: 上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にし、業務効率を上げたい方

もし、あなたがこれらのいずれかに当てはまり、「もっと分かりやすく伝えられるようになりたい」「コミュニケーションを円滑にして、仕事をもっとスムーズに進めたい」と感じているなら、この記事はきっとあなたの役に立つはずです。

この記事のゴール

この記事を読み終えることで、あなたは以下の状態になっていることを目指します。

  • PREP法の構造 (Point, Reason, Example, Point) を正しく理解している
  • PREP法を使って、情報を論理的かつ簡潔に構成するスキルが身についている
  • 日常の報告、会議、ドキュメント作成など、様々なビジネスシーンでPREP法を応用する具体的なイメージが湧いている
  • PREP法を実践することで、コミュニケーションに対する苦手意識が軽減され、自信を持って発言・記述できるようになる
  • 「分かりやすい説明ができるエンジニア」として、周囲からの信頼を高める第一歩を踏み出せる

このPREP法を身につけることで、あなたのコミュニケーション能力は飛躍的に向上し、周囲からの信頼も自然と厚くなるでしょう。

PREP法とは?

PREP法は、ビジネスシーンにおけるコミュニケーション、特にプレゼンテーションや報告、文章作成などで非常に有効とされるフレームワークです。

PREPとは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。

  • P = Point(結論)
  • R = Reason(理由)
  • E = Example(具体例)
  • P = Point(結論の再確認)

この順番で情報を構成し伝えることで、聞き手 (読み手) は話の要点を素早く理解し、内容を記憶しやすくなります。
では、それぞれの要素について、もう少し詳しく見ていきましょう。

P – Point(結論):まず、何を伝えたいのか?

PREP法の最初の「P」は「Point」、つまり結論です。

会話や文章の冒頭で、あなたが最も伝えたいメッセージや主張、提案などを明確に、そして簡潔に述べます。

  • 例1 会議での発言: 「本日の議題である〇〇の件ですが、私はA案を推奨します。」
  • 例2 上司への報告: 「先日ご相談した〇〇機能の改修ですが、無事完了しました。」
  • 例3 技術ブログの冒頭: 「この記事では、最新の〇〇フレームワークの基本的な使い方を解説します。」

最初に結論を提示することで、聞き手は「これから何についての話が始まるのか」「この話のゴールはどこか」を瞬時に把握できます。
これにより、その後の話を聞く準備が整い、集中力も高まります。
特に忙しい上司や、多くの情報を処理しなければならないチームメンバーに対しては、この「結論ファースト」が非常に効果的です。

R – Reason(理由):なぜ、そう言えるのか?

次の「R」は「Reason」、つまり理由です。

最初に述べた結論に対して、「なぜそう言えるのか」「どうしてその結論に至ったのか」という根拠や背景を説明します。

  • 例1 会議での発言: 「A案を推奨する理由は、開発コストを最も低く抑えられるからです。」
  • 例2 上司への報告: 「完了したと言える理由は、全てのテストケースをクリアし、QAチームからの承認も得られたためです。」
  • 例3 技術ブログの冒頭: 「このフレームワークを取り上げる理由は、近年の開発トレンドであり、多くの現場で採用が進んでいるからです。」

理由を明確にすることで、あなたの主張に論理的な裏付けが与えられ、説得力が増します。
「なんとなくそう思う」ではなく、「こういう理由があるから、こう考える」という姿勢は、エンジニアとしての信頼性を高める上でも重要です。

E – Example(具体例):例えば、どういうことか?

3番目の「E」は「Example」、つまり具体例です。

理由をさらに補強するために、具体的な事例、データ、エピソード、詳細な情報などを提示します。

  • 例1 会議での発言: 「具体的には、A案の場合、既存のライブラリを最大限活用できるため、新規開発部分が全体の20%に留まります。一方、B案では約60%が新規開発となり、工数と期間が大幅に増加します。」
  • 例2 上司への報告: 「例えば、〇〇という複雑な条件下でのパフォーマンステストも問題なくパスし、レスポンスタイムは平均0.5秒以内を維持しています。QAレポートの該当箇所は別途共有します。」
  • 例3 技術ブログの冒頭: 「実際に、大手IT企業の〇〇社や△△社が基幹システムに採用しており、求人市場でもこのフレームワークの経験者の需要が高まっています。私のチームでも最近導入し、開発効率が向上した事例があります。」

具体例は、聞き手の理解を深め、内容をよりイメージしやすくする効果があります。
数値データや客観的な事実、あるいは自身の経験談などを交えることで、話にリアリティと深みが増します。
エンジニアであれば、具体的なコード片、エラーメッセージ、アーキテクチャ図なども有効な「具体例」となり得ます。

P – Point(結論の再確認):だから、こう言える!

そして最後の「P」は、再び「Point」、つまり結論の再確認です。

冒頭で述べた結論を、理由と具体例を踏まえて再度繰り返します。
これにより、伝えたいメッセージが聞き手の記憶に定着しやすくなります。

  • 例1 会議での発言: 「以上の理由から、開発コストを最小限に抑えるために、A案を推奨いたします。」
  • 例2 上司への報告: 「したがって、〇〇機能の改修は、計画通り無事完了したとご報告いたします。」
  • 例3 技術ブログの冒頭: 「このように、〇〇フレームワークは今学ぶべき重要な技術ですので、本記事でその基本をしっかり押さえていきましょう。」

最後の結論は、冒頭の結論と全く同じ言葉である必要はありません。
理由や具体例を受けて、少し言葉を変えたり、ニュアンスを加えたりしても良いでしょう。
大切なのは、話の着地点を明確にし、聞き手に「結局何が言いたかったのか」をしっかりと理解してもらうことです。

PREP法の構造的メリット

PREP法がなぜこれほどまでに効果的なのか、その構造的なメリットを整理しておきましょう。

  • 話の全体像が掴みやすい: 最初に結論が示されるため、聞き手は「何の話か」を迷うことなく、安心して話を聞き進められます。
  • 論理的で説得力が増す: 「結論→理由→具体例」という流れは、人間の思考プロセスに自然と合致しており、主張にしっかりとした根拠があることを示せます。
  • 聞き手 (読み手) の理解を助ける: 抽象的な結論や理由だけでなく、具体的な事例を交えることで、内容がイメージしやすくなり、記憶にも残りやすくなります。
  • 簡潔に伝えられる: PREP法を意識することで、話が冗長になったり、脱線したりするのを防ぎ、要点を絞って伝えることができます。

このように、PREP法は情報を整理し、相手に分かりやすく伝えるための非常に強力な「型」なのです。

PREP法を使いこなすための3つのコツ

PREP法の構造とメリットをご理解いただけたでしょうか。
この強力なフレームワークも、知っているだけでは宝の持ち腐れです。
ここでは、あなたがPREP法をスムーズに使いこなし、コミュニケーション能力を向上させるための3つの実践的なコツをご紹介します。

コツ1: まずは「結論 (Point) 」から考える癖をつける

PREP法の肝は、何と言っても最初の「P」、つまり結論から入ることです。

しかし、私たちはつい、話の経緯や背景から説明し始めてしまうことがあります。
特に技術的な説明では、前提知識を共有しようとして、本題に入るまでに時間がかかってしまうことも少なくありません。

これを改善するためには、何かを伝えようとするとき、まず「自分は何を一番伝えたいのか?」「この話の着地点はどこか?」を自問自答する癖をつけることが大切です。

  • 会議で発言する前に: 「この発言で、私は何を決定してほしいのか?何を理解してほしいのか?」
  • メールを書く前に: 「このメールで、相手に何をしてほしいのか?何を知ってほしいのか?」
  • ドキュメントを作成する前に: 「このドキュメントの最も重要なメッセージは何か?」

頭の中で結論が明確になれば、それを最初に言葉にするのは難しくありません。
最初は意識的に「結論は〇〇です」と口に出してみるのも良いでしょう。
この「結論ファースト」を徹底するだけで、あなたの話は格段に分かりやすくなります。

コツ2: 「具体例 (Example) 」の質にこだわる

PREP法において、結論 (Point) と理由 (Reason) を支え、説得力を飛躍的に高めるのが「E」、つまり具体例です。

単に「具体例を挙げれば良い」というわけではなく、その「質」にこだわることで、PREP法の効果はさらに高まります。

質の高い具体例とは、以下のようなものです。

  • 客観性がある: 個人的な感想だけでなく、数値データ、公的な資料、再現可能な事実など、誰もが納得しやすい情報。
    • エンジニアの例: 「CPU使用率が平均80%から40%に低下しました」「エラーログに〇〇というメッセージが記録されています」「〇〇という論文でこの手法の有効性が示されています」
  • 関連性が高い: 結論や理由と直接的に結びついている事例。話の流れと関係のない具体例は、かえって混乱を招きます。
  • 分かりやすい: 相手の知識レベルや状況に合わせて、専門用語を避けたり、身近なものに例えたりする工夫。
    • 非エンジニアに説明する場合: 「この処理は、例えるなら大量の書類を仕分けする作業のようなもので…」
  • 具体性がある: 「いろいろ」「たくさん」といった曖昧な表現ではなく、「3つの問題点」「5件の問い合わせ」「〇〇という機能」のように、具体的な言葉を使う。

特にバックエンドエンジニアであれば、ログの抜粋、パフォーマンス計測結果、簡略化したアーキテクチャ図、具体的なAPIのエンドポイント名なども、強力な「具体例」となり得ます。
相手に「なるほど、そういうことか!」と腹落ちさせる具体例を用意できるよう、日頃から情報を整理しておくことも重要です。

コツ3: 日常的に練習する

どんなスキルも、実践を繰り返すことで身につきます。
PREP法も例外ではありません。

「いざという時に使おう」と思っても、なかなかスムーズには出てこないものです。
大切なのは、日々の小さなコミュニケーションからPREP法を意識して使うことです。

  • チャットでの短い報告:
    • (悪い例) 「〇〇の件、対応しました。」
    • (PREP例) 「P: 〇〇の件、対応完了しました。 R: ご指摘のバグが原因でした。 E: 修正後、テストケースも全てパスしています。 P: これで問題ないかと思います。」
  • チーム内の進捗共有:
    • 「今日の進捗ですが、P: 〇〇機能の実装が7割完了しました。 R: 主に△△の部分のコーディングを進めたためです。 E: 具体的には、API連携部分とデータベースのCRUD処理まで終わっています。残りは例外処理と単体テストです。 P: 明日中には一旦完了できる見込みです。」
  • 技術的な質問をする際にも:
    • P: 〇〇について教えていただけますでしょうか。 R: △△を実現したいのですが、□□の部分でエラーが出てしまい困っています。 E: エラーメッセージは『×××』で、試したことは…(具体的に)。 P: 解決のヒントをいただけると幸いです。」

このように、短い文章や会話でもPREPの型を意識することで、自然と論理的な思考と説明の仕方が身についていきます。
最初はぎこちなくても構いません。
繰り返し実践するうちに、PREP法はあなたの強力なコミュニケーションツールとなるでしょう。

PREP法が万能ではないケースと、その際の心構え

ここまでPREP法の素晴らしさをお伝えしてきましたが、どんなツールも万能ではありません。
PREP法も、使う場面や相手によっては、必ずしも最適とは言えないケースが存在します。
ここでは、PREP法が馴染まない可能性のある状況と、そんな時に心に留めておきたいことをお伝えします。

PREP法が適さないかもしれない場面

  • 共感や感情の共有が主な目的の場合:
    例えば、1on1ミーティングでのキャリア相談や、チームメンバーが落ち込んでいる時の声かけなど、相手の気持ちに寄り添うことが大切な場面では、PREP法の論理的な構成がやや冷たく、事務的な印象を与えてしまう可能性があります。「結論から言うと…」と切り出すよりも、まずは相手の話をじっくり聞く姿勢が求められるでしょう。
  • 自由な発想を引き出したいアイデア出しの初期段階:
    ブレインストーミングのように、まだ結論が見えていない段階で多様な意見やアイデアを自由に出し合いたい場合、PREP法で「結論は何か」を性急に求めると、かえって発想を狭めてしまうことがあります。このような場では、結論を急がず、まずは多くの意見を歓迎する雰囲気づくりが大切です。
  • 複雑な背景や経緯の説明が不可不可欠な場合:
    時には、結論に至るまでの複雑な経緯や、多くの前提知識を共有しなければ、本質的な理解が得られないこともあります。そのような状況で無理にPREP法に当てはめようとすると、説明不足で誤解を招く可能性も。状況に応じて、時系列で丁寧に説明する方が適切な場合もあります。

PREP法を使う上での心構え: 柔軟性が鍵

PREP法は非常に強力なコミュニケーションの「型」ですが、それに固執しすぎる必要はありません。
大切なのは、PREP法を絶対的なルールとしてではなく、あくまで便利なツールの1つとして捉え、状況や相手に応じて柔軟に使い分けることです。

  • 相手の反応を見る: PREP法で話し始めたものの、相手が戸惑っているようなら、少し説明の仕方を変えてみる。
  • トーンを和らげる: 論理的に話すことは重要ですが、言葉遣いや表情、声のトーンで柔らかさを加えることで、相手に与える印象は大きく変わります。
  • 他の手法と組み合わせる: 例えば、結論を述べた後、相手の質問を促したり、共感の言葉を挟んだりするなど、PREP法をベースにしつつ、他のコミュニケーション要素を取り入れるのも有効です。

PREP法は、あなたのコミュニケーションの引き出しを増やすための一つの手段です。
その特性を理解し、TPOに合わせて賢く活用することで、より円滑で効果的なコミュニケーションが実現できるでしょう。

まとめ

さて、ここまでPREP法について、その構造から具体的な使い方、使いこなすコツ、そして注意点まで解説してきました。

PREP法は、単なる「話し方のテクニック」ではありません。
それは、情報を整理し、論理的に思考し、相手に分かりやすく伝えるための強力なフレームワークです。
特に、複雑な技術やロジックを扱うバックエンドエンジニアにとって、このスキルは日々の業務を円滑に進め、チームに貢献し、そして何よりも自分自身の考えを明確にする上で、非常に大きな助けとなるでしょう。

思い出してください。
この記事のゴールは、あなたがPREP法を理解し、実践できるようになることでした。

  • 結論から話す勇気を持つこと
  • 理由と具体例で、あなたの言葉に説得力を持たせること
  • そして、日々の小さなコミュニケーションから、PREP法を意識して使ってみること

これらを積み重ねることで、あなたの説明は驚くほど分かりやすくなり、「あの人に聞けば大丈夫」「田中さんの説明はいつも的確だね」と、周囲からの信頼も自然と高まっていくはずです。
コミュニケーションに対する苦手意識も、いつの間にか自信へと変わっているかもしれません。

もちろん、PREP法を完璧に使いこなせるようになるには、少し時間と練習が必要かもしれません。
しかし、今日から意識して取り組めば、必ず変化を実感できるはずです。

さあ、PREP法という新たな武器を手に、あなたも「伝え方」で差をつけるバックエンドエンジニアを目指しませんか?
この記事が、その第一歩となることを心から願っています。

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この記事を書いた人

10年目のバックエンドエンジニアです。
若手バックエンドエンジニアの道標となる情報を発信します。
PHP, Laravel, MySQL, AWS, Dockerが得意です。
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